コレステロールといえば「とり過ぎはよくない」といわれ、健康を害するものだとされてきました。
しかし、2015年にアメリカ政府が発表したアメリカ人の食生活に関するガイドラインによれば、コレステロールの過剰摂取は「懸念すべきことではない」とのこと。
日本の厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」でも、2010年まではコレステロールの上限としていた摂取目標量が定められていましたが、2015年版では削除されています。
■コレステロールは体に不可欠
コレステロールは脂肪の一種で、ホルモンや胆汁酸の材料です。細胞膜を構成する物質でもあり、コレステロールが不足すると細胞膜が弱くなってウイルスなどが侵入しやすくなるのだとか。
すると、白血球の働きも弱くなって、免疫力が低下してしまうといわれています。
その結果、がんや感染症にかかるリスクが高くなることも。約5万の日本人を対象にした「日本脂質介入試験」でも、総コレステロール値が180mg/dl未満の人たちのがんによる死亡率は、280mg/dl以上の人と比べると5倍も高いそう。
大阪府八尾市の住民を対象にした調査でも、コレステロール値が低い人ほど、ガンにかかる率が高かったそうです。
日本人のおもな死因にあげられる脳卒中についても、国立循環器病センターの研究によれば、血中コレステロール値が低いほどリスクが高まるという結果に。
ほかにも、東京都健康長寿医療センターの研究では、善玉コレステロール(HDL)値が低いと認知症の発症リスクが高くなるという報告があります。
■卵を食べても大丈夫?
コレステロールが多い食べものといえば「卵」。健康を気にする人から避けられやすい食材ですが、厚生労働省研究班の多目的コホート研究によると、卵摂取頻度と心筋梗塞の発症リスクに関連性はないとのこと。
ただし、血清コレステロール値が高くなると、心筋梗塞のリスクは高くなります。血清コレステロールとは、善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)をあわせたものです。
血液中のコレステロールが増えると心筋梗塞などの罹患率がアップするのに、コレステロールの摂取量の上限はない。
その理由は、コレステロールの摂取量を認定するための科学的根拠が少ないとのこと。食事からコレステロールを摂取しても、その量がすべて血清コレステロール値に反映されるわけではないことも一因かもしれません。
また、コレステロールは糖質と一緒に過剰摂取することで、動脈硬化を引き起こすこともあるそうです。
コレステロールは体に必要なもので、不足するとさまざまな疾病へのリスクが高くなり、食べ合わせや摂りすぎによっては健康を害する可能性も。
摂取量やコレステロール値などは医師のあいだでも意見がわかれているようですが、バランスの良い食生活を送っていれば問題なさそうです。
(藤井蒼)