肥満とストレスは密接に関係しています。
何かとストレスフルな現代生活。ハードな仕事、複雑な人間関係、溢れる情報、異常気象など、ストレスの種は尽きません。
こうしたストレスの原因となるものを「ストレッサー」と呼び、それに対して心身に起きるさまざまな反応を「ストレス反応」と言います。このストレス反応のなかには「太る」ことも含まれています。よく言われる「ストレス太り」や「ストレス痩せ」もそのひとつです。
それではストレスによって太るメカニズムを見ていきましょう!あなたは大丈夫ですか?
ストレスで「太る」4つのメカニズム
生理学的にみて、ストレスによって太る原因は次の4つが挙げられます。
1:過食によるもの
たまったストレスを解消するにはさまざまな方法があり、これらを総称して「ストレス・コーピング」と言います。ストレス・コーピングのなかでも比較的手ごろでよく行われているのが、飲んだり食べたりすることによるストレス発散です。
とくに脳に負荷がかかることによって、必要な栄養素を欲し、結果、糖分や脂肪、必須アミノ酸などを摂るよう要求するので、甘いものや肉類を過食するケースも出てきます。当たり前ですが、ストレス発散に食べれば太りますし、逆に、食べられなくなれば痩せます。
2:自律神経の影響
ストレスフルな状況が続くと自律神経のバランスが崩れます。このため、脂肪の分解や燃焼、代謝に深く関係している交感神経の働きが低下して、体内での脂肪の代謝がスムーズに行われなくなり、太ってしまいます。
3:ストレスホルモンの影響
脳はストレスを感じると、コルチゾールというホルモンを分泌します。コルチゾールは脂肪を蓄積させやすいのが特徴です。また、食欲抑制ホルモンのレプチンを減少させ、食欲を増進させ、過食に走らせてしまいます。
4:活性酸素の影響
ストレスによって発生する活性酸素が、細胞でエネルギーを作り出すミトコンドリアを傷つけます。
このため、エネルギーの消費(代謝効率)が悪くなり、脂肪が燃焼されず太ってしまいます。
肥満とストレス :4つの「性格傾向」って?
ストレスで太る背景には、どんな心理が働くでしょうか?
これについてもストレスに弱い、いくつかの性格傾向が指摘されています。
1:生活習慣危険傾向
暴飲暴食やカラオケなどの娯楽を、手っ取り早くできる「ストレス解消」だと思っていて、ストレスそのものに無自覚な性格。食べたり飲んだりしてストレス解消をはかることが、その後どのような結果を生むのか考えが及ばないタイプです。
それで、身体への影響などに関係なく、むやみに食べ過ぎてしまったりします。
2:漂流傾向
人の意見に左右されがちで、自分の意見を持たない流されやすい人もストレスで太る傾向があります。
ダイエットのCMや広告などに振り回され、効果のないものや、事後にリバウンドを生みやすい極端な方法にハマるタイプです。
3:孤高傾向
前述した漂流傾向とは反対に、自分で決めたことしかやらないタイプの人もストレスで太りやすいです。これは、客観的な検証や専門家の意見を信用せず、自分流儀で情報を解釈することが原因です。独断的にふるまうため、周りと衝突することも多く、ストレスから過食に走ります。
4:神経質傾向
なんでも完璧にやらなければ気が済まない神経質な人も太りやすいです。
たとえば「食べたら太るからまったく食べない」なんて考え方をするのもこのタイプ。それでいながら、現実的なさじ加減が苦手なので、いつもこれでよいのかと不安になります。
参考:佐藤隆『ビジネススクールで教えるメンタルヘルスマネジメント入門』ダイアモンド社
リラックスすると痩せる?
ストレスで過食に走り、またホルモンバランスが乱れて太ってしまうことがわかりました。
では、反対にリラックスしたら痩せられるのでしょうか?ストレスがなくなれば痩せられるのでしょうか?
これは「NO」です。
なぜなら、ストレスがまったくない状態は現実には考えられないからです。また、リラックスの意味が「休日に何もしないでごろごろしている」ということや「好きなだけ食べる」とほしいままに振る舞うという意味なら、やはり痩せません。
しかし、リラックスをすることによって自分のなかにゆとりができ、食事や運動などの生活習慣をととのえることができ、さらに適切なダイエットを継続し続けられるのであれば、結果は大きく異なります。
痩せたいのであれば、色々なダイエット方法を試す前に、まずは、自らのメンタルマネジメントのチカラをつけることが重要ということでしょう。
執筆・監修:山本 恵一
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長