肥満は糖尿病の重要な因子だが肥満でなくてもなることはある。
2型糖尿病は遺伝的な体質に様々な環境因子が加わって発症。やせていても加齢や運動不足などでなることも。
インスリンが不足して血糖値が上がるのが糖尿病
糖尿病は尿に糖が出る病気と言いますが、本質は血糖値が高くなる病気です。血糖値は、血液中のブドウ糖濃度のことで、血液1dL中のブドウ糖の量(mg)で表します。
体の細胞が働くためには常にエネルギーが必要ですが、ブドウ糖は最も重要なエネルギー源です。血糖値が60mg/dL以下になると、血液中のブドウ糖濃度が低いことによる「低血糖」の症状が現れ、さらに低下すれば意識を失ってしまいます。
このため、体にはグルカゴンや副腎皮質ホルモンなどの低血糖を防ぐ働きを持つホルモンがありますが、血糖を直接的に下げる作用を持つホルモンは、膵臓のランゲルハンス島の細胞から分泌されるインスリンのみです。
このインスリンが足りなくなったり、うまく働けなくなったり(インスリン抵抗性)すると、血糖値がコントロールできなくなり糖尿病になります。
もともとは糖を含んだ尿がたくさん出ることから糖尿病と名付けられた病気ですが、その本質はインスリン不足による高血糖にあるのです。
血液の中には血糖が余っているのに、細胞の中はエネルギー不足に
インスリンが不足して血糖値が上がる仕組みをもう少し詳しく見てみましょう。
ブドウ糖がエネルギー源として利用されるには、細胞の中に取り込まれなくてはなりません。脳の細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますから、常にブドウ糖を取り込んでいます。
一方、筋肉は血糖値が上がった時にインスリンの指令によってブドウ糖を取り込みます。
インスリンが足りないと、食後にブドウ糖が吸収されてもうまく細胞に取り込まれず、血液の中にとどまって血糖値が上がります。
また、肝臓でもインスリンの指令がないとどんどんブドウ糖を作るため、さらに血糖値は上がってしまうのです。
やせていても糖尿病になることもあり、重症になるとやせてしまう
糖尿病には1型と2型の2つのタイプがあります。
1型糖尿病は子どもや若い人に多く、ウイルス感染などをきっかけに免疫の働きが誤ってインスリンを分泌する細胞を破壊してしまうことが原因と考えられ、生活習慣の乱れや肥満とはまったく関係がありません。
2型糖尿病は遺伝的な体質に、肥満や食生活の乱れ、運動不足などいろいろな環境因子が加わって発症する生活習慣病です。
やせていても加齢や運動不足などで糖尿病になることがあります。また、糖尿病は、血液の中には血糖が余っているのに、細胞の中はエネルギー不足の状態です。
そのため、脂肪や筋肉が分解され、重症になると太った人でもやせてしまいます。
自分はやせているから大丈夫と思わずに、血糖値が高いことを指摘された場合は、医師の指示に従って精密検査を受けるようにしましょう。
監修者:澤田めぐみ(さわだ・めぐみ)先生
内科医。東京医科歯科大学医学部卒。「医学を学ぶのは医師を目指す人たちだけ」という現状に疑問を抱き、「賢い医療消費者を育てたい」という思いから、2011年に日本で唯一の小中学生を対象とした医学教室「とうきょうキッズメディカルスクール」を開校。