夜更かしすると、ついつい夜食やお菓子に手を出してしまう……。そんなとき、自分の弱い意志を責めてしまう方もいることだろう。でも、少し待っていただきたい。
それはあなたの意志の弱さの問題だけでもないようなのだ。
アメリカで行われたある実験によると、睡眠不足により食欲増進の傾向が強まるのは、マリファナの服用によって食欲が増すのと同様のメカニズムであり、そのせいで余分なカロリーを摂取しやすくなるということが判明したのだ。
幸福感をもたらす脳内物質と睡眠時間とに関係性はあるか？
シカゴ大学・睡眠代謝健康センターの研究チームは、睡眠の制限が「内在性カンナビノイドシステム」にどう影響を与えるかについて調査した（※1）。
内在性カンナビノイドとは、ほ乳類の脳や体内で自然に作り出される物質で（※2）、食欲・幸福感・痛みの緩和など、脳と体内のさまざまな機能に関わっている。また、カンナビノイドは多幸感をもたらすマリファナの主成分であることから、人の幸福感や満足感をつかさどる報酬系にも関係しているという（※3）。
実験に参加したのは20代の健康な男女14名で、8.5時間と4.5時間の睡眠をそれぞれ4日間ずつ取ってもらった。また、食事は全く同じ内容のものを1日3回決まった時間（午前9時、午後2時、午後7時）に取り、食欲と満腹感を示すホルモンと、内在性カンナビノイドの1つである「2-AG」の血中量を測定した（※4）。
ダイエットの敵!? 寝不足で睡眠時間が減ると空腹感・食欲が増加
本来、2-AGは朝目覚めてから徐々に上昇し、昼食後すぐの午後に頂点に達してから、睡眠時に最低レベルまで落ちるというサイクルを繰り返す。
しかし、睡眠不足中は2-AGの血中濃度が通常より約3割増加し、午後2時に頂点に達してからは午後9時ごろまで高い状態が続いた。
さらに、睡眠が制限された期間は特にランチ後に参加者の空腹感が増加し、不健康な食生活をしやすくなった。
1日の必須カロリーの9割を占める食事を2時間前に取ったばかりなのに、おやつを差し出されると受け取ったうえに、通常よりカロリーが1.5倍、脂質は2倍にもなるおやつを選びがちになったのだ（※4）。
睡眠不足中、食欲に勝つことが難しくなる
睡眠不足と肥満の関係は、この分野の研究者の間では周知の事実。
しかし、今回の実験では新たに、そのメカニズムには、内在性カンナビノイド血中濃度のレベル増大が背景にあると明らかになった。
睡眠不足だと、お菓子など本来なら我慢できるはずの余分なカロリーを摂取してしまい、それが肥満やダイエットの失敗につながる可能性があるという。
やはり寝不足はダイエットの敵！ 夜更かししてもカロリー消費は少ない
ある研究結果によると、3〜4時間余分に起きていることで消費できるカロリーはせいぜい50〜70カロリー程度（※4）。この間に空腹を感じてついこれを超えるカロリーを含んだお菓子や夜食を食べてしまう……。
このような生活を毎日続ければ体重が増えていってもおかしくはない。
空腹でも食欲にあらがえるという確固たる自信があれば、夜更かししても問題はないかもしれない。しかし、程度に差はあるものの睡眠不足がマリファナと同じように脳に働かけるのは事実。
「ダイエットに成功したい」「できる限り太りたくない」と願うなら、ぜひ毎日十分な睡眠を取ることを心掛けるべきだろう。
引用｜参考
※1：Sleep restriction enhances the daily rhythm of circulating levels of endocannabinoid 2-arachidonoylglycerol Erin C. Hanlon., et al. http://www.journalsleep.org/ViewAbstract.aspx?pid=30492
※2：大麻報道センター 内因性カンナビノイドシステム http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=3464
※3：カンナビノイド受容体―中枢神経系における役割 山本経之 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/130/2/130_2_135/_article/-char/ja/
※4：News Wise Sleep loss boosts hunger and unhealthy food choices http://www.newswise.com/articles/sleep-loss-boosts-hunger-and-unhealthy-food-choices
