BCAAはアスリートやハードにトレーニングをしている人が活用しているサプリメントというイメージが強い一方で、最近ではスポーツ飲料に含まれるなど、一般人にも身近になってきています。
身近になったBCAAですが、上手に活用すれば、ダイエットが楽になると知っていますか?
ただ、効果を最大限に得るためにはちょっとしたコツが必要。そこで、BCAAの基本から効果的な摂り方まで、コンディショニング・トレーナーの桑原弘樹先生に伺いました。
●BCAAは筋肉や骨など体を作る材料
BCAAとは、体を構成する必須アミノ酸全20種類のうちの3種、バリン、ロイシン、イソロイシンの総称で、体内で作ることができない栄養素です。
肉や魚などのたんぱく質を摂ると、体内で分解されてアミノ酸になりますが、残念ながらBCAAだけが含まれているたんぱく質は存在しません。より効率よくBCAAを摂取するには、サプリメントを活用するのが効率的です。
「BCAA以外のアミノ酸は肝臓で代謝されるので過剰に摂取すると肝臓に負担がかかります。ですがBCAAは肝臓ではなく筋肉で代謝されるので肝臓への負担はゼロ。たっぷり補っても心配ありません」(桑原先生)
●ラクちんダイエットには筋肉が必要
大きな熱を生む筋肉は、何もしなくてもカロリーを消費してくれるので、筋肉量を増やすことが楽にダイエットを成功させる近道と言えます。
しかし人間のDNAにはカロリーを大量に消費する筋肉は飢餓の敵、とインプットされています。エネルギー消費によって飢餓状態に導いてしまう筋肉をあまり増やさないようにと、体には筋肉を分解しやすい酵素やたんぱく質が元から備わっています。
「体内では筋肉の分解と合成の力比べが常に起こっています。ただやみくもにトレーニングをしても、合成より分解がまさってしまいます。より効果的に筋肉をつけるには2つのポイントがあります」
「より効果的に筋肉をつけるポイントの1つは筋肉の分解を抑えること」と桑原先生。分解を抑える最大のスイッチは糖質(炭水化物)です。体が飢餓状態ではない、と認識すれば筋肉の分解はストップします。
「夜寝ている間に筋肉は分解方向に傾いています。朝食に、ご飯やパンをプラスしてしっかり糖質を補いましょう。トレーニング後もエネルギーを使いきってしまうので、糖質を補う必要があります。糖質が含まれる、スポーツ飲料などで補いましょう」
もう1つのポイントは、筋肉の合成を強くすることだそう。
「筋肉合成のスイッチを入れるのはトレーニングです。ですが、トレーニングは合成のスイッチを押すと同時にエネルギーを消費するので、分解も進んでしまいます。そこで活用したいのがBCAA。
BCAAをトレーニング時に摂取すると、BCAAが合成のスイッチを押し、“筋肉を増やそう”という情報が伝達されます。アミノ酸が体内に入って行くのに約20分かかります。トレーニング前、トレーニング中に摂取し、筋肉の分解を抑えながら、筋肉の合成を強めていきましょう」
「昨今、筋肉の中にあるサルコリピンというたんぱく質によって熱が生み出され、しかもエネルギーを消費してくれることがわかってきました。筋肉量を増やせば、このエネルギーを消費してくれるサルコリピンも増えるということ。筋肉があるほど、動かなくても痩せやすい体になり、ダイエットもラクちんに」と桑原先生。
BCAAも上手に取り入れて、効率よくダイエットしていきましょう。
桑原 弘樹
〈桑原塾〉主宰。多くのアスリートにコンディショニング指導を行うほか、スポーツ・サプリメントの開発にも携わる。
撮影/布川航太 文/大石結花